「The world is your oyster!!」中尾 雅子(高34)

皆さん、こんにちは!34回生の中尾(天津)雅子です。
突然のコラムの依頼にとてもとまどっていますが、英語教育に長年携わっている経験から、私が今皆さんにお話しできることを書かせて頂きたいと思っていますので、どうぞ最後までお付き合い下さい。

タイトルの”The world is your oyster!!”という言葉を聞いた事はありますか。私はこの言葉が大好きなので、卒業する生徒や留学をする生徒に必ずこの言葉を贈っています。

「世界はあなた次第で何とかなる」、「世の中は思うがままだ」という意味の言葉は、これから外の世界へと飛び出していく生徒たちの不安な気持ちを元気づけてくれるものであり、同時に自分次第で世界をどうにでも変えられるという事は、思いのままに羽ばたける自由さとそれに伴う責任もあるという事を教えてくれています。つまり成功するのも失敗するのも自分次第!そしてその全ての責任は自分にあるという事です。

不思議なのですが、私はこの言葉を知った時に、何故だか胸の奥がきゅんと痛くなるような気持ちがしました。何か遠い昔を思い出すような、そんな感覚でした。私が感じた懐かしさは、おそらく星陵で過ごした3年間の自由な気持ちに通じているもののようでした。

現在、私は芦屋にある英語専門校で常勤の英語講師をしていて、週5日毎日フルに、小学生から高校生に英語を教えています。クラスの内容は多岐に渡り、初めてABCを習う子供たちとフォニックスソングを歌ったり、ゲームやダンスをしたりするクラスから、国公立や難関私大を目指す受験生のクラス、留学準備のためのIELTSやTOEFL、また資格取得のための英検やTOEICのクラスなど様々な内容を担当しています。私にとっての英語は、大学在学中からの航空会社勤務を経て、現在の仕事に至るまで、常に身近な存在であり、また終着点のないチャレンジし続けなくてはならないものです。その英語と私をリンクさせた原点が、実は高校時代にあったのです。

(授業風景)

(小学生のクリスマスイベントでの一こま)

星陵での高校時代は、締め付けが厳しかった中学時代と大きなギャップがありました。まるで少女漫画に出てくるような自由な校風にただただ圧倒され、完全に自分を見失っていた私は、気がつくと自由さばかりにとらわれ、自分の責任である勉強の方は疎かな生徒になっていました。完全に自由の意味を履き違えていたのだと思います。そんな私でも、さすがにこれではいけないと思い立ち、散々な成績の中、唯一まだ何とかなりそうな英語に頑張りだしたのは、高校2年生の終わり頃からでした。

洋楽が大好きで、自分のお気に入りのアーティストが話している言語を理解したいという気持ちがあったので、英語は好きな教科でしたが、学習方法が全くわかっていなかった私には越えなくてはいけないハードルが沢山ありました。このハードルを越えていく大きなきっかけとなったのが、文型の理解です。

残念な事にその頃の中学では、文型という概念を教えるという事はなかったように思います。高校に入学してから習った5文型を理解する事がなかなか出来なかった私ですが、文型が理解出来て、品詞の概念がわかるようになってから、パズルを当てはめていくような感覚で、苦手だったものを得意なものへと変えていけるようになりました。

英語を教えていく上で私の鉄則は、5文型と品詞(8品詞)の理解です。文法はルールなので、まずは文型の理解が先だと思っています。それと同時に品詞の役割が理解出来ると、かん違いし易い文型の見分け方が楽になっていきます。今までの経験から、第2文型と第3文型をよく間違える生徒たちが多いですが、補語か目的語かを品詞の観点から区別するとかん違いもなくなります。このような事を知っているだけでも英語の学習は全く違ったものになっていくと思います。

書く力、読む力、聞く力、話す力の4つを一緒に伸ばしていくには、単語を覚えて語彙力を増やす事はもちろんですが、文型を理解する事で、文法があまり分かっていなくても全体像が把握出来るようになります。つまり文を作る順番がわかるので、その順番通りに単語を当てはめていけば、細かいルールを無視する事になったとしても、全体のイメージがつかめるという訳です。これが出来ると、文法的に完璧でなくても、文が書け、意味がわかり(読める)、聞けて、そのまま話せる事になります。ここに文法というルールを組み込めば、正しい文が出来るのです。

聞く力と話す力に関しては、これに加えて経験を積んで、場慣れしていく必要もあると思います。日本語が表意文字であるのに対して、英語は表音文字ですので、頭の中で文字の配列が理解できても、実際の音になった時に対応する能力もつけていかなければいけないからです。

私が勤務する英語専門校では、文型の理解に重点を置き、さらに聞けて話せる力をつけるために、公開ライブでリスニングテストをしたり、暗唱やアメリカの小学校でよく行われているショーアンドテル(みんなに紹介したい物、自慢したい物を発表する事)や演劇を通して多くの人の前で発表する機会を設けています。文を覚えることや感情を表現する事が、全身を使っての学習となってきます。ある程度の文章を覚える事で、聞ける事へと繋がり、さらに自信をつけて話せる事へと繋がっていくのです。

(ネイティブ講師によるライブリスニングテスト)

(英語表現力コンテストでの一こま:ピーターパン)

(英語表現力コンテストの全体写真:舞台衣装をつけて~)

振り返ってみて、星陵は自由を重んじる校風があったように思います。星陵の自由は、責任が伴う自由で、仮に自由の意味を取り違えてしまっても、必ずどこかの地点でそれに気づかせてくれる環境もまたあったように思います。

仕事柄、留学したら何とかなる、英語が喋れるようになる、自由になれると安易に思っている生徒や保護者が多いのに、びっくりする事が何度もありました。その都度、留学したら何とかなるのではなくて、留学するまでに日本で出来る限りの学習を続けて、しっかり力をつけてから海外に出れば全く違ったものになるという事を伝えています。その時に初めて、The world is your oyster!!がその言葉通りに実践出来るのです。

「世界はあなた次第で何とかなる」、「世の中は思うがままだ」を叶えるためにも責任ある自由の大切さを英語学習を通して伝えていきたいと私は思っています。

(カナダ留学中の生徒T君と一緒に)