「星陵アイデンティティー」松木平 伸一(高30)

連載コラム 『LINK 星陵』に掲載する原稿依頼を受けましたこと心より感謝致します。2010年11月に同窓会文化講座にて『パールセミナー〈神戸から発信、日本が誇れる宝石「真珠」の話〉』講師をさせて頂きました30回生の松木平です。出席された方はセミナーで本物の真珠を使った真贋判別テストで楽しんで頂けた事を覚えておられるかと思います。

私は現在、真珠輸出卸の仕事をしております。メインの取引先はアメリカで毎年約6回出張しています。この原稿もロサンゼルスのホテルにて書いております(現地:12月11日夜)。高校時代は読み書きが重要な教科である英語・国語・社会が苦手で理系に進んだのですが、何の因果か英語で営業するといった全く正反対の仕事に就いてもう13年になります。色々な運命・環境にうまく順応し、とにかく明るく前向きに人生を楽しむのが私の中での「星陵アイデンティティー」です。私のこれまでの経緯をお話させて頂きそのDNAを紐解いてみたいと思います。

幸い数学・物理・化学は好きであり得意でもあったので高校卒業後は工学部・工業化学科へ進学。就職活動では化学系の会社を何社か訪問しましたが何かしっくりいかず、他を色々と探していた時に就職課の掲示板に一枚の張り紙を見つけました。

「真珠表面処理の研究職 化学系新卒1名 勤務地:神戸市垂水区 大洋真珠株式会社(大洋漁業株式会社の子会社)」

研究職である事と勤務地が垂水である事に惹かれ直ぐに連絡を取り会社訪問へ。垂水区美山台の大きな敷地に工場・社宅・独身寮が建つ立派な会社でした。工場内を案内して頂くと、なんと窓際にズラリと数十名の若い女性が並んで選別作業をしているじゃないですか!すぐにこの会社に入ることを決心しました。(その直感は正しくその何年後かには職場にて家内と知り合い結婚)

最初は真珠の洗浄・研磨・調色などの実務を学び、色々な作業上の問題点などを改善していくといった正に化学系出身者の知識が生かされる仕事をしておりましたが、原料仕入スタッフ不足の為、そちらの手伝いで日本中の真珠養殖現場に出向き入札会での助手をする仕事に引っ張り出されました。出先では養殖業者との付き合いが上手だったのか、ただ一緒に調子よく酒を飲んでいたのか解りませんが私が行くと商談がうまくまとまる事が多く、段々と仕入主体の仕事にシフトして行きその後完全に加工研究を離れ仕入部門の管理職になりました。この時の仕入の仕事が後の運命に繋がっていきます。

この頃(30歳代前半)に結婚し2人の子供を授かり、3階級特進でラインの部長に昇進しこのまま定年まで順風満帆かと思いきやバブル崩壊で会社自体が傾き、親会社(当時:大洋漁業㈱ 現:マルハ・ニチロ・コーポレーション)の意向で会社精算となりました。精算に至るまでの縮小作業を遂行するリストラ委員を仰せつかり、ほぼ縮小完了したところで私も退職することにしました。

ここで仕入部門の経験が繋がって行きます。多くの在職中にお世話になった仕入先の皆様のご協力を頂ける事となり1999年に真珠卸会社を設立しました。39歳、厄年からの人生再スタートです。とにかく最初は大洋在職時にお世話になった国内外のお取引先へご挨拶に行き会社精算・退職に至った経緯を話し、何か出来ることがあればお仕事として頂きたいとお願いしましたところ少しずつですがお仕事を頂きなんとか会社のスタートが切れました。その後2001年に幸運にも縁あって大洋真珠が持っていたアメリカ販売代理店への商品供給の仕事を引き継ぐ事となりました。ここから年6回のアメリカ出張が始まります。アメリカでの主な仕事は各地で開催されるジュエリーショー(国際見本市)へ出展し来場顧客への販売です。結局色々な繋がりから英語で喋りまくって営業するといった高校在学中には100%予想できなかった状況になったのです。 

ラスベガスショーでのブース

ロサンゼルス・オフィス&ショールーム

会社勤務の期間を含め真珠に携わって31年間、こうやって何とか今まで過ごしてこられたのも高校時代に星陵高校で自由な教育を受けたお陰だと思っています。「星陵アイデンティティー」とは「途中の回り道しようとも自分の納得いく道を何の躊躇なく楽しんで進み、結果は前向きに受け止める」そういう風に私は感じています。そのように人生を歩んでおられる先輩・同期・後輩が沢山居られる事も大きな心の支えとなっています。

ナパバレー シャトー・モンテレーナにて

日本人としてのアイデンティティーについても少しお話させて下さい。

アメリカには多くの民族が暮らしています。展示会でも「お前は中国人か?」と聞かれる事が多いですし、中国人や韓国人との商売や食事などの付き合いも多く、自分が日本人である事の誇りを見失いそうになります。海外で仕事をする場合、「自分が自分である為に必要なこと=アイデンティティー」をとても意識します。私は会社を設立した時から出張前には必ず自宅近くの多井畑厄除八幡宮へお参りをしています。日本人にとっての神様の存在は強く私達のDNAに刷り込まれておりアイデンティティーを再確認させて頂けます。私の姓「松木平」は十津川郷士で知られる十津川村から来ており神道と関わりの深い家系であり昨年からは知人の勧めもあって、もっと神道に関わろうと思い多くの神社へ出向くことにしています。そういった事からお導きがあり伊勢神宮遷宮行事のお白石持ち奉献(敷石を手に持って新しい御正宮が建つ敷地に運ぶ神事)に参加させて頂くことが出来ました。新正宮の数メートル近くまで接近しお白石をお納めし光輝く御正宮を目の前にしてこのご縁に大層感謝感激致しました。

お白石持ち

新正宮

これからもどんな素晴らしい転機が訪れるか全く予想できません。星陵アイデンティティー+日本人アイデンティティーを大切にして楽しく暮らして行きたいと思っております。

ちょっとコマーシャル。

国内小売販売も積極的にやってます!星陵特別価格にてお世話致します。お気軽にお声をかけて下さい。

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