「食が結ぶ日本とタイと私の関係」結城 久美(高31)

思いがけずコラムの依頼をいただき、さて、何を書こうかと改めて我が身を振り返ると、アメリカで6年、タイのバンコクで25年と日本での生活より海外の暮らしの方が長くなってしまっていました。

その間、それなりにいろんな事がありましたが、そんな一筋縄では来なかった生活の中で、一貫して関わってきたのが「食」というものでした。

私が高校に入る頃に自営業を始めた我が家では、徐々に夕食の支度は私の役割となっていきました。いつも3時間目を終える頃には、「今晩のおかず」を考えていたことを思い出します。

家の冷蔵庫にあるもので適当に夕食を作ると、それを母が褒めてくれるので、私にとって、料理とはそんな日常の気負わないものでした。

私がバンコクに住むようになってからは、料理上手だった母が「いつか一緒にバンコクでお店をしようね」と言い出し、漠然とそうする事になるような気がしていたものです。

そんな母が病気でこの世を去ったのが16年前。

なんとそのたった一ヶ月後にバンコクで一番の日本人居住地域に、お店を作りたいので手伝ってくれないかとお声をかけていただいたのです。

母との約束を果たせる良い機会だという思いもあって、私はためらうことなく引き受けました。

ところが、蓋を開けてみると、いろいろあってプロジェクト自体は流れてしまい、結局は私個人で始める決心をしたのです。

日本人の多く住むスクンビット地区に出した最初のお店

現在はこんなかんじです

思えば、アメリカに居た時も、高齢で目の不自由になってきていた牧師で有り、教授の食事係を友人と一緒にしたり、よく食事会に招いたり、招かりたり。料理する、食べるということはずっと変わらぬ、身近な好きな事ではあったなと思います。

日本は私がいた頃から既にグルメ大国と呼ばれて来たように思いますが、その傾向は今もますます強くなって来ているのではないでしょうか。

そして、その影響は最近のタイの日常生活にもどんどん入り込んで来ているように思います。

私がお店を始めた頃には、本来の日本食のイメージとは異なる「洋食」というカテゴリーも、今ではさほど珍しいものではなく、ついにはオムライスや和風パスタの専門店まで出来ています。おかげで、開店当初と比べると当店のメニューに関しても随分説明しやすくなりました。

始めた当初は、日本食といえば、寿司、天ぷら。外観はいかにも和風を強調したお店ばかりでしたし、グラタンや和風パスタ、オムライス、などのいわゆる洋食を出すお店もなく、自分が入りたくなるような日本食店がなかなかなかったのです。

開店当初に取材を受けた雑誌のコラムでは、イカ墨カレーを紹介していました

今ではお店のメニューも時代や自分の年齢とともに、少しづつ変化し、玄米や野菜を多く取り入れた独自の洋食メニューや、日本人に抵抗のある脂っこさや甘さ辛さを控え目のタイ料理なども提供しています。

既にバンコクでも健康志向のお店も増加中ですが、これは日本だけではなく世界的な傾向かもしれませんね。

週替りの玄米ランチプレート
タイ料理や和風のお惣菜を少しずつ、玄米と一緒に食べるヘルシーランチを提供しています

人気の玄米オムライスきのこトマトソース添え

それにしても、バンコクは今、空前の日本食ブームではないでしょうか。日本のバラエティー料理番組などの影響で、若いタイ人の間では日本食や、フュージョン寿司のお店も大人気です。バンコクには600店以上の日本食店が有るとも言われていますが、既にそれは過去の数字かもしれません。流行にも敏感に反応し、今では、パンケーキのお店まで進出していますから。

タイのライフスタイルを先導する売れ筋雑誌「a day」の日本食特集で、納豆や味噌汁、塩麹などの醗酵食品を紹介しました

また反対に、日本人の中にも日常に中華を食べるように、タイ料理を食べる人が増えてきた様に思います。

グリーンカレーや、スパイシーなトムヤムクン(エビのスパイシーハーブ入りスープ)等は、ご存知の方も多いでしょう。日本に本帰国になった友人が言うには、今や、タイのハーブや調味料がスーパーでも普通に買えるところが多くなり、タイの激辛インスタントラーメンなども、100均で買えるほどだと言います。都会ではタイ料理レストランも珍しくはなくなってきているようですね。

お店でのタイ料理教室も人気です

このように、食に関してはタイと日本との距離がどんどん縮まって来ているのを今までになく感じます。

おそらく、日本はタイだけではなく、他の国々とも食を通して、関係が深まっているところが多々有ると思います。意図的ではないにしてもです。

この自他ともに認める日本人の食に対する感心は、日本人の探究心と凝り性なところ、何にでもこだわる性質などが、どんどんレベルアップしていった結果だと思いますが、これも日本が世界に誇れる美点の一つだと思います。

和食が無形文化遺産として世界でも認められると言う結果につながったことが、何よりの証だと思います。

何はともあれ、これからも私は、恐れ多くも4つの食神(四柱推命によると!?)を背負ってバンコクと日本の狭間を生きていくのでしょう。。。

皆さん、これからバンコクに駐在、又はご旅行でいらした際には、スクンビットソイ12のブラウンアイズに遊びに来て下さい。合い言葉『星陵高校の同窓生』で、バンコクの暮らし無料相談もお受けします!

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結城久美
Kumi Yuki

Brown Eyes
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