「二胡と歩む日々」鳴尾 牧子(高43)

二胡という中国伝統楽器を始めて20年ほどになります。星陵高校を卒業後、神戸市外国語大学で中国語を専攻しました。2回生の夏に北京大学に短期語学留学した時、課外授業で二胡を習う機会があり、中国人の先生から手ほどきを受けました。たまたま舞子にある実家の近くに孫文記念館という異人館があり、そこに当時としては珍しく二胡同好会があったので、楽器をお蔵入りさせることなく続けることができました。

大学3回生が終わった後、北京の中央戯劇学院に今度は長期の予定で留学しました。北京到着後一週間目に中央音楽学院を訪ね、留学生を通じて先生を紹介してもらい、1年間の留学の後半は、音楽学院に潜り込むことに成功、中国語の勉強もそっちのけで二胡と琵琶の練習に明け暮れました。

帰国後、復学、大学院に進み、いったん就職後また復学、と迷走する中、二胡の練習だけは熱心に続けました。

だんだん日本でも人気が上がりつつあった中国音楽は、愛好者によるオーケストラなども現れ、そこに参加して国内外のいろんな演奏会に出演する機会を得ました。

マンドリンオーケストラと共演

二胡を始めとする中国音楽が「女子十二楽坊」などのヒットによりブレイクしたことは思いがけぬ幸運でした。演奏活動やレッスンが仕事として成立するようになり、いつしかこの道で生きていくようになりました。自分でも予想しなかった方向に進んだとは思いますが、古典漢文に歴史好きだった高校時代、中国語専攻の大学時代、一応しっかり現在の自分に生かされていると思います。

ここ数年は、自らの演奏活動の傍ら、教室の生徒を主体に「鳴尾弦楽団」という音域の違う二胡類を集めた弦楽オーケストラを作り、イベントに参加したりコンサートを行ったりしています。

2013年4月 鳴尾弦楽団
第三回中国音楽フェスティバル
(レ・ミゼラブルを演奏)

2014年6月には兵庫県立芸術文化センターの中ホールで2ndコンサートを開催、親しくさせてもらっている二胡界のトップ奏者を中国から招聘したり、息子と一緒に習い始めたカンフー教室の老師を招いて音楽と武術のコラボレーションをしたり、ずいぶん新しい試みを行いました。

2014年6月 鳴尾弦楽団
2ndコンサート
フライヤー

二胡という楽器は、日本では「癒しの音色」と評されてゆったりしたどこか懐かしい音楽を奏でる楽器だと認識されています。それは二胡の魅力のとある重要な一面ではありますが、一面、非常にテクニカルな演奏も可能な楽器です。その両方が合わさったところが二胡の本当の底力だと思っています。現在の二胡の音楽の最先端は非常に前衛的な曲も多く、伝統楽器とは思えない迫力と表現力を備えています。私が二胡を始めた20年前から考えても、二胡はどんどん進化、発展しており、楽器も改良され、奏法も広がり、新しい試みのユニークな楽曲が次々と現れてきています。まさに二胡という一つの楽器が進化していく過程をリアルタイムで体験しているという気がします。

改良されたハイパー二胡「韶琴」

日本人制作の二胡「西野二胡」

二胡の多面的な魅力を表現したいという思いから、一昨年、胡琴四重奏団「Xeno Quartet +」(ゼノ・カルテット プラス)というグループを立ち上げました。

西洋の弦楽カルテットの二胡版といった編成で、二胡×2、中胡、革胡に打楽器をプラスして、これまで二胡であまり演奏されなかったジャンルや現代二胡曲、オリジナル曲を演奏しており、今はこのグループの活動に力を入れて、二胡の現代化、国際化のムーブメントの一端を担いたいと思っています。

Xeno Quartet +

昨年夏、私たち43回生の同窓会が大々的に行われ、そこでいろいろな人と再会しました。

幹事の一人、桝田和宏君とは、お互い音楽を続けているということで、また何か一緒にできたらいいねと話していたのですが、それが先日ついに実現し、ボイス・パーカッションの桝田君が主宰するアカペライベントのコンピレーション・アルバムに参加させて頂きました。

Kobe Acappella Next Vol.5

最近はFacebook等を通じ、星陵高校出身の方とつながることが増えてきました。高校時代に根を張った縁が、長い時間を縫って次はどこでどんな実を結ぼうとするのか、今後も楽しみにしています。

胡琴篇 〜二胡奏者 鳴尾牧子のページ〜