「サッカーを仕事にして思うこと」増田 清一(高58)

皆様、はじめまして。58回生の増田清一と申します。

このコラムの執筆の依頼を頂戴したときに、このような若輩者の自分が書かせていただくのは失礼に当たらないかと恐縮しておりましたが、同級生で友人の岸根早雪さんが早々とLINK星陵デビューされ、自身が経営しているお店の宣伝を大々的にされているのを過去の記事で知ったこともあり(笑)、今回僭越ながらお受けすることに致しました。最後までお付き合いいただければ幸いです。

星陵高校を卒業してもうすぐ10年が経とうとしていますが、今でも親交がある友人は星陵高校で共に青春を過ごした仲間ばかりです。
高校時代は、どんな場面でも節度のある行動ができる気の合う友人と信頼できる先生方に囲まれて、大変充実した3年間を過ごすことができました。
当時はヴィッセル神戸のユースチームでサッカーをしていたため、サッカー部には所属していませんでしたが、担任の先生のみならず、サッカー部の顧問をされていた横田先生や土居先生にも随分と可愛がっていただき、大変お世話になりました。

卒業後はJリーグのヴィッセル神戸のトップチームへ入団し、プロサッカー選手になるという幼い頃からの夢を叶えることができました。
しかし、想像以上にプロの世界の壁は高く、3年後に戦力外通告という形でヴィッセル神戸を退団することになりました。今思えば「Jリーガーになること」が目標であった自分は、プロになったことに満足し、「Jリーグで活躍する」為の努力を怠ってしまっていたのかもしれません。プロの世界は甘くないと痛感させられました。
その後は秋田、群馬のクラブで約3年間プレーし、24歳で現役を引退しました。
そして、現在は自分を育ててくれたヴィッセル神戸のスタッフとして、未来のJリーガーを育てるべく中学生(ジュニアユース)の指導にあたっています。

選手時代は自分がまさかサッカーの指導者になるとは想像すらしていませんでしたが、色々な方とのご縁があり、今こうしてヴィッセル神戸の一員として責任のある仕事をさせていただいていることを、大変光栄に思っております。

「人の振り見て我が振り直せ」

これは私が指導者として子ども達と接するなかで最も大切にしている言葉です。
子ども達には、嘘をついてはいけない、人に迷惑をかけてはいけない、自分のことばかり考えてはいけない、時間を守らなければいけない、物を大切にしなければいけない、などと誰もが小さいときから親や学校の先生に教わってきた当たり前のことを、事あるごとに伝えています。
このような場面で自分が考えるようにしているのは、注意する立場の自分はそのことを当たり前のようにできているか、自分は子ども達を叱る資格がある生き方ができているのか、ということです。
自分が普段できていないことを子ども達に求め、やらせるというのはどうも後ろめたさを感じてなりません。
また、自分ができていないことを子ども達に偉そうに言ったところで、それは説得力のない軽い言葉として聞こえてしまうと思うのです。
それに加えて、子ども達からの信頼というものがなければ、いくら正しい言葉を並べても心に響かず、納得してくれないということも実感しています。大人でも自分が嫌いな人にいくら正しい理屈を並べて説教されても心が動かないのと同じです。
そういった様々な経験していくなかで、自分なりにある結論に辿り着きました。
それは子ども達から信頼され、子ども達の心を動かす指導者になるためには、「愛を持って子ども達と向き合い、普段から自分が人として正しい生き方していくしかない」というものです。
我々のクラブは「日本をリードし、世界で通用する人間性豊かな選手の育成」という素晴らしい育成理念があります。
そのような選手を育成するためには、指導する立場の自分が更に人間力を磨いていかなければなりませんし、その為には自分も失敗を恐れず、色々な経験をしていくなかで成長していかなければいけません。
ただ、こんなことを思ってはいるものの、クラブに迷惑をかけることが多く、1人の人間としても社会人としても自分の未熟さに打ちひしがれる毎日です。
理想と現実のギャップを埋めるためには、日々精進していくしかありません。

サッカーを通して自己を高め、子供たちの未来に触れられるこの仕事にとてもやりがいを感じていますし、自分が大好きなサッカーを仕事にできていることに何より幸せを感じています。今後、自分が直接関わった選手達がヴィッセル神戸のトップチームで活躍する姿を見ることができれば最高です。

今年でクラブは創設20周年の節目を迎え、悲願のJリーグタイトル獲得へクラブを挙げて全選手、全スタッフが一致団結し、邁進しているところです。
このコラムをきっかけにヴィッセル神戸というクラブをお見知りおきいただき、1人でも多くの方に試合を見に来ていただければ嬉しい限りです。お時間がありましたら、是非ノエビアスタジアムにお越し下さい。星陵高校の卒業生の方々の応援ほど私にとって頼もしいものはありません。

最後になりましたが、このような機会をいただきまして誠にありがとうございました。
ヴィッセル神戸だけでなく、星陵高校サッカー部もずっと応援しています!
今後ともどうぞよろしくお願い致します。