「今夜も飲みながら」麻田 裕美(高34)

「2月と言えばバレンタインデー」ですね。

高校の頃、チョコレートケーキやら、クッキーを大騒ぎで作って楽しんだ日ははるか遠く、今ではもっぱら「バレンタインだからワインを飲もう!」とかなんとか、こじつけてワインを飲む日しています。今日もせっかくだから(何が?)、栓を抜いちゃいますか(笑)

バレンタインなどのイベントを意識して、何を飲もうかと考えるのは楽しいもの。簡単に思いつくのはシャンパンになってしまうのかな。神戸にはトアロードにニッチなシャンパンバーがありますが、本当にシャンパンしか置いていないそのお店では、お気軽にこの高級感あふれる飲み物が楽しめます。フルート型のグラスに注いで、泡が上ってくるの眺めていると、それだけで、何やら華やかな気分になれる優れもの。素敵なお相手のある方は是非どうぞ。

バレンタインに売れるワインとしてかなり知られているのですが、ラベルにハートマークを配したカロン・セギュールという赤。ワイン好きな方でなくても一度は目にしたことがあるのではないかしら?ミントやチョコレートの香りがして美味しいという話だけれど、味わいがとても硬いというのが個人的な感想(結構、値がはるので、そう何度も飲んだわけではないのですが)。けれども、これは若い時だけだそうで、長く熟成すれば美味しく飲めるらしいです。
ふむ。。。。人間関係も同じだなと、ボルドーグラスに注いだ濃いルビー色の液体を光にかざして考えたりします。若いときは固くて、互いに接してても、うまく調和できずに終わった仲間でも、30年たった今、言葉を交わせば、思いがけない芳香がただよってくるような。。。 とまで言ってしまえば、「お前、なに気取ってんねん!!」と頭を叩かれそうだけれど(笑)

自由で明るい校風と言われる私たちの母校ですが、高校生の私は別のイメージを持っていました。暴力的になったり、寡黙になったり、ホルモンバランスの崩れからくる思春期特有の症状は、人によって違うのでしょうが、私の場合のそれは、自分の心の闇に捕まるという形で、星陵時代に現れてしまいました。星陵祭の華やかな喧騒や青春とやらの思い出を作るはずの修学旅行だけでなく、ただの爽やかな風も、青い瀬戸内海も、校庭に注いでいた太陽の光でさえ、何やら自分に敵意を持っているように感じられ、気が付けば、親に気が付かれない程度、クラスメートに変に思われない程度に学校に行かいようになっていたんです。

不思議の国のアリスが、ウサギの穴に落ちて行った時と同じように、自分でも気が付かないゆっくりとした速度で、深く深く暗闇の中に落ち続ける。そんなイメージをもって高校の3年間を過ごしてしまった。幼児の時から老眼の煩わしさを知るようになる現在に至るまで、友達に囲まれてワイワイ過ごすのが大好きなはずなのに、何の因果で一番楽しいはずの高校時代を棒に振らないといけなかったのだろう。本来の自分を取り戻したと感じられるようになってからも、高校時代のことを思い出さないといけない瞬間には胸に鈍痛を感じるような気がして、ぶんぶんとマイナスの考えを振り払うようにして過ごしました。それで別に良いと思っていたし。そうやって、何年間も、いえ二十数年もの間、高校時代の人にはかかわらないようにして生きてき てしまったのですが、フェイスブックのつながりで同窓会の幹事会へのお誘いを受けたとき、少しためらいはしたものの、なぜかYesと答えていました。どうしてなんでしょう。心のどこかで、手に入るはずだったものは手に入れたいと思っていたのかもしれません。

手に入るはずだったもの。。。
それは多分、何の遠慮もなく笑いあえる仲間との時間。
多感な時代を同じ場所で一緒に過ごした高校や大学の時の同級生にそれを求めるのに、異議を唱える人は少ないでしょう。しかも舞台は星陵で、お勉強がまあまあできる一方でアロハシャツを着て、廊下でスケボーする高校生が、普通にいるところ。面白い人がいっぱいいたに違いないのに、自分はなんてもったいないことをしていたんだ!!気がつきたくなくても、後悔する気持ちが渦巻いていたのでしょうね。

不思議なことに、実際に同窓会実行委員の集まりに参加してみると、高校時代に一度も話したことがない人とでも、ただ数時間その場にいるだけで、嘘のように打ち解けてしまう。電車で隣に座っただけなら「ただのおっさん」なその人の(いや、失礼は承知でいいますが)卒業からここまでの30年間に思いをめぐらせ、よい時間だったね、また会えてうれしい!と何やら深い愛情を感じてしまうんです。それに、実際、一人一人の人生の豊かなこと。 物静かだったあの娘の最先端フィールドでの活躍ぶり、世界を旅する彼の色彩豊かなレポート、細やかな感性を感じる写真を物静かに差し出す、北の国に住む彼女。大きく輝いている人、佇まいの美しい人、積み上げてきた毎日の力強さをオーラだけで感じさせる人。あのひとも、この人も。

そうだ。今度、カロン・セギュールを、年間300本はワインを飲むというEくんにごちそうになろ!
空気をいっぱい含ませて、時間をかけて、みんなで楽しく飲みたいな。質の良いブドウを丁寧に熟成させた高級な赤ワインは、今の私たちにこそふさわしい!!

などなどと、今夜も飲み過ぎたようですな。

ではでは、近いうちに皆さんとおいしいワインが飲めますように・・・