コラム『星陵生をたずねて』 現役生にふれて感じたこと 黒田明宏(高30)

平成24年度東海支部総会での黒田さん(右端)

30回生の黒田明宏と申します。3月17日、今年で39回目となる「卒業生による講演会」が母校で開催され、講師を務めさせていただきました。講師を受けるに当たり、相当悩みました。私には高校時代の記憶がほとんどありません。そんな私が高校時代のことを語るべき人間ではないと思ったからです。しかしながら、同期である同窓会副会長 山田祐子さんに推されて講師を引き受け、本当に良かったと思っています。講演会を引き受けたことにより、現役生と会う機会や先生方とお話しする機会を得て、星陵高校を近くに感じることが出来るようになりました。また、4月22日には東海支部総会があり、名古屋にお越しになった芦田校長先生ともお話ができましたし、恩師である音楽の田村先生とも会うことができました。同窓会を通じて、星陵高校との距離が縮まったと感じております。

 

 

「サラリーマンのオンとオフ」というタイトルで講演会をさせて頂いたのですが、現在57歳であるということは、サラリーマンとしては現役ではあるけれども、60歳の定年に向かい自分の属していた組織がその業務の継続性を持って遂行できるシステムを完備すること(つまり組織の継続性の維持)がメインの業務となって行く立場であるということです。

1月、東北ボランティアに参加 宮崎県名取市の仮設住宅にて

5月2日にコーラス部の先輩であり、現在母校の音楽教諭をされている植村先生(高28)を訪問しました。植村先生には3月の講演会でもお世話になりました。先生の音楽の授業を参観させていただくと、3年生3名がTEAM-NACSのDVDを見ながらの授業でした。大泉洋さんがベートーベンに扮し、劇中にはモーツァルト、シューベルト、サリエリなどが出てきて、適宜DVDを停止し、植村先生が音楽史の補足を説明する形でした。クラシック音楽史の黄金期を解りやすく、面白く、理解できる授業は、高校の授業も素晴らしいものだと感じました。しかしながらポイントは、先生の補足であり、それこそが授業の真骨頂だと思いました。

そのあと、音楽教官控え室で3月の講演の感想文を拝見しました。私の講演がどのように現役生の皆さんに伝わったのか、不安に思っておりました。想像以上に寝ている方が少なく(寒かったせいもあったかも)、皆さん真面目に聞いて下さった印象が強いです。感想文を全て読み終えて、現役生の皆さんの多かった感想のベスト5をあげさせていただきます。

 

1.「人生は思い通りにならないことがほとんど、それを対処して行くことが社会的自立である」この発言に以外と反応が多かったのは、星陵生はみんな幸せなのかもしれませんね。

2.「経済的自立をする前に、自分が一生興味を持てるものを見つけるべき」これは、今回私が現役生の方に一番伝えたかったことです。経済的に依存できる今(学生時代)こそ、自分自身を認識するチャンスだと思います。

3.「企業内自立が重要であり、AI化により誰にでもできる仕事はロボットがするようになる」企業内でアイデンティティの確立が重要、のくだりでお話ししたのですが、若い方はもっと深刻に考えていらっしゃると考えておりました。

4.「発言しない者は社会的に存在しないのと同じ」3と同様に黙って黙々と業務こなすタイプの方の感想が多かったような気がします。

5.「好きなことを仕事にするのは、幸せではない」これはすでに自分の確固たる趣味を持っていらっしゃる方の感想が多く、趣味を仕事にすることの是非を考えてみる、というような感想がありました。

コーラス部のみなさん

放課後には、植村先生が顧問をつとめていらっしゃるコーラス部に参加いたしました。簡単に言うと「ミュージカル」を創り上げようとしており、一部を生徒さんが作曲や振り付けなどもやっており、かなり驚きました。もちろん個人差が大きいのが高校生のクラブ活動でしょうが、植村先生の指導方法を目の当たりにして、教育とはこう言うことか、とひとり納得しておりました。植村先生の指導を受ければ、自分のカラオケももっと上手くなるかも、なんて感じておりました。現役生の皆さんと接して、印象として真面目な生徒さんの多さに感動しました。今の17歳の方は、私の40歳年下になるわけですが、私が楽観的だから言う訳ではないですが、今の私より現役生の皆さんの方が幸せであると考えます。最後の保護産業である放送業界の崩壊も近いと推測される現在、日本的保護主義経済社会から自由主義経済に変化するタイミングで、社会に出られる現役の皆さんは幸せだと思います。単純に自分の能力が評価されやすい社会に変革すると思われるからです。しかしながら、「終身雇用制は無くなる」と言う私の推論に驚き、AI化の現実をあまり直視されていない、など社会環境の変化にもう少し興味を持たれることを望みたいと思います。少し苦言を程せるほどに、星陵高校が近くに感じることができ、自分の幸せを感じております。