「災害とお薬」辻本 博樹(高44)

こんにちは。44回生の辻本博樹と申します。
卒業してから大学時代は大阪で住んでいましたが、卒業後は再び神戸市の垂水区に住所を戻しております。
母校のそばで仕事をしている事から、卒業生や在学生と顔を合わせることもあり、その度に在校当時の懐かしい記憶が蘇ります。

さて、リレー連載のコラムを引き受けたものの何を書こうか高校時代の思い出か?今の趣味の釣りや山登りのことでも書くかと悩んでいるうちにどんどん原稿の締め切りが迫ってきました。最終的には仕事でお薬を扱っているということと、1月17日に神戸の震災の追悼式をみかけたこと、また災害ボランティア派遣で東日本大震災にも行きましたので今回は「災害とお薬」というテーマでお話ししたいと思います。

災害時の医療はいつも問題になるテーマの一つではあります。災害の都度、対応策などが検討されバージョンアップはされてはいますが、起こった状況が阪神淡路大震災では、エリアは限定的ですが怪我をされている方が多い。一方、東日本大震災ではエリアが広範囲で津波による被害のため怪我の方はエリアの広さに比較して少ないが、津波という新しい因子があった等、必ずしも同じでは無く、国や地方自治体の予算的限界もあるなど解決はなかなか難しい部分も多く感じます。医療支援という点では阪神淡路大震災以降組織されたDMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日本医師会災害医療チーム)が中心となる体制が東日本大震災では大きく活躍されたのは皆様もテレビなどでご覧いただけたかと思います。

一方、お薬は東関東大地震では津波という災害で普段患者自身が持っている薬が水没や津波で流されていつも飲んでいる薬が無い方が多く発生しました。普段慢性的な病気でお薬を飲まれている方もこの文を読まれている方の中にもおられるのではないでしょうか。災害時に普段のお薬は大丈夫なようにしてますか?災害時は怪我をされた方も受診しています。そこに慢性疾患のお薬の方も災害時に残った病院へ受診したため、東日本大震災の際には医療機関が想像を絶する混雑状態になったり、一般外来を停止する病院も多かったと聞きます。普段は時に気にすることなく病院で医師に処方箋を書いてもらい、薬局でお薬を貰われていると思われますが、災害などで普段行かれている医療機関が開いていなければ他の医療施設でお薬ももらおうとしても普段使用されている薬は本人しかわかりません。お薬手帳や薬の説明書などを持っておられればそれを見せていただくことで同じもの、無ければ同じような働きのものを選択しやすくなりますが、そういうものをお持ちでないと症状や飲み方、錠剤やシートの色から推定して行きますが、一般に使用されている薬品が約3万種類程、それなりの薬局であれば1薬局での取り扱い薬品種類が2千種類を超える程になりますので、他の病院や薬局で貰われているお薬を聴き取りで確認して行くことは時間も労力もすごく必要ですし最終的にわからないこともあります。ですから、ご自身が飲まれているお薬がわかるようにしておくことはとても大事なことなのです。

私がお勧めする方法は
1.お薬手帳をきちんとつける。 非常時は免許書や保険証とともに持って出る。
2.携帯でお薬手帳やお薬、手帳の記載内容の写真を撮る。携帯電話は常に携帯していることが多く非常時や外出中でも持っていることが多い。欠点としては電池が切れると役に立たない。
3.住んでる場所の違う子供や親戚などに薬の説明書などをおいておく。 災害時などに電話で聞けるようにする為です。FAXでお薬の説明書を送っておくと良いと思います。

あと普段からにもなりますが、災害時に数日間分のお薬の手持ちはありますか? 現在はコンピューター化が進み医療機関も注文を入れると数時間後には納品されるという流通革命により医療機関は多種の薬品を在庫している一方、一つ一つの在庫量というのは減っております。 その状況の中、災害などで流通を絶たれると数日場合によっては、数時間で薬が欠品してしまう状況が考えられます。

母校が神戸のため災害に合われた方も多くおられると思います。 ご自身で飲料水や食料、その他を数日分備蓄されている方もおられると思いますが、 慢性疾患でお薬を飲まれている方はぜひお薬も一週間分から二週間分ほどをご自宅で備蓄するようにしていただければいざという時も安心かと考えます。 災害だけでなく自分が風邪などの急性疾患で受診できないなどの時も 手持ちのそのお薬で対応することができます。

東日本大震災では超法規的措置措置として災害から4日後の3月15日に災害地域において止むを得ない状況であれば、
1.保険証が無くても受診ができます。
2.手持ちがなくて窓口で代金を払わなくても大丈夫。
3.電話で医師と連絡を取りながらメモ等により調剤を行うことが可能になりました。
4.麻薬は駄目ですが、3が困難な場合には、お薬手帳や薬歴などで慢性的に 服用している事が確認できた場合には薬局は事後、医師に医師に処方箋を発行してもらうことを条件にお渡しすることが出来ました。東日本大震災の翌年に仙台でシンポジウムがありその際厚生労働省の方も参加されていましたが今後南海、東南海地震なども考えられ、大きい災害があった場合に東日本大震災の対応に沿った対応が取られるであろうというお話でした。

これに伴い昨年(2012年)の4月からお薬手帳を薬局で貰っても患者負担が増えないようになりました。お薬手帳を忘れた場合などには手帳に貼るためのシール等が交付されているかと思いますので手帳に忘れず貼ると良いと思います。 災害時だけでなくお薬手帳は経時的に記録して行くため今何の薬を飲まれているかだけでなく、その方がどのように薬が変わって行ったのかなども分かるようになっていますので入院時にお薬手帳を持参して下さいという病院も最近増えてきています。またお薬手帳は薬剤師しか触ってはいけないものではありません。活用されている患者さんは、医療費を書き込んだりや検査の結果表を一緒に貼ったり、血圧を書いていかれたりされている方もおられます。ぜひご活用ください。

なんとなくまとまりの無い文章になってしまいましたが 「災害時、医療の供給が開始するまでを繋ぐのにお薬の備蓄もお勧めします。」と「お薬手帳等をきちんとつけていて災害時に持ち出したら今までとほぼ同じ薬などをもらうことが出来て安心です。」というお話でした。

支離滅裂な内容のコラムとなったかもしれませんが,このコラムをお読みの皆さまが,今後益々健康でご活躍されますことをご期待申し上げて次の走者へバトンを繋げたく思います。