「明石海峡クルーズ”イルカ号”」糸井 雅明(高27)

27回生の糸井です。「LINK星陵」に掲載する原稿依頼を受けましたこと、大変な光栄です、ありがとうございます。

私は現在、神戸マリンピアクルーズ「イルカ号」を運航しています。昨年4月から、垂水にあります「マリンピア神戸」さかなの学校前から遊覧船事業をスタートさせました。星陵高校出身の皆様も様々な職業についていらっしゃると思いますが、観光船事業をやっているのは私だけではないでしょうか。そして私自身もこの事業を立ち上げるなど夢にも思っていませんでした。では、なぜこのような事業を始めることになったのか、私自身の気持ちの整理も込めてお話しさせて頂きます。

私は星陵高校の近く、舞子台で生まれ「愛徳幼稚園」「東舞子小学校」「歌敷山中学校」を経て「星陵高校」に入学しました。ですから高校卒業まで電車通学したことがありません。星陵在学中は将来の具体的な夢が持てず悶々とした学生生活を送っていましたが、ある時ふと旅に出まして下関と門司をつなぐ関門海峡の前に立ちました。その時に見た関門橋の雄大な姿にいたく感動し、もともと絵や工作が得意だったこともあり、建築家になろうと決意したのです。

大学を出て建築設計事務所に就職し無事に一級建築士になり、いくつかの事務所で勉強させてもらいました。独立し自分の事務所を構えていた時期もありましたが、ある会社に誘われて再びそこに就職することとなりました。結局その会社には足かけ23年もお世話になってしまいました。その会社はレジャーやリゾート開発、また遊園地経営もしており、時代もバブル経済の真っただ中でリゾートや遊園地また博覧会の設計業務を数多く手がけることができました。本社は大阪でしたが仕事は東京が中心でしたから、結局16年間東京に単身赴任となりました。東京に行くとき3歳だった次男が大阪に帰ってくると大学生になっていましたよ。久しぶりに帰ってきた神戸、東京に行くまでは見慣れた景色でしたが、改めて見直してみると美しい六甲の山並み、目の前の瀬戸内海や淡路島そして明石海峡大橋、なんと素晴らしい景色ではありませんか。まさに目からうろこが落ちた状態です。

定年を前にして自分の人生を振り返り、最後までこの会社にとどまる選択肢もありましたが、やはり最後の締めくくりとして永らく留守にしていた地元のお役に立てる仕事をしたいとの気持ちが湧いてきました。この地元の素晴らしい景色を一人でも多くの人に知ってもらいたい、そしてそれが地元の観光振興の一助になれたらこんなうれしい事はない、その手段として思いついたのが遊覧船事業です。実は、子供の頃から釣りが好きで船の免許もありボートも所有していましたので、海から見える景色は良く知っていましたし、友人を乗せてクルージングした時の皆の感動した顔もよく覚えていたのです。56歳で勤めていた会社を早期退職し、わずかな退職金とコツコツためていた資金をすべてこの事業に投資。もちろん妻は猛反対でしたが、それを拝み倒して昨年4月、何とか開業にこぎ着けました。

初代「イルカ号」は見てのとおりイルカの形をしており、子供たちには大人気。

しかし残念なことにこの船は定員が12名と少なく、いくら頑張っても採算が取れません。また、お客様が増えてきますと乗り切れなくなってきてクレームが発生。予想していたことですが、いざ直面しますとなかなか大変です。そこで思い切って今年の4月に二代目「イルカ号」にチェンジ。

この船は定員が60名でクルーザーですから船内にはカウンターバーもあります。

遊覧船のコースは、マリンピア神戸「さかなの学校」前を出港し、世界一の吊り橋「明石海峡大橋」の下をくぐり、西舞子の沖でUターンし再びマリンピア神戸に戻る、約30分の海上遊覧です。このコース上には「五色塚古墳」「アジュール舞子」「武藤山冶邸(旧カネボウ舞子倶楽部)」「孫文記念館(移情閣)」「舞子砲台跡」その他たくさんの観光施設や歴史的に貴重な史跡があります。

「五色塚古墳」

「アジュール舞子」

「武藤山冶邸(旧カネボウ舞子倶楽部)」

「孫文記念館(移情閣)」

もちろんクライマックスは「世界一の吊り橋明石海峡大橋」の直下をくぐっていく瞬間です。船のデッキから真上を見ながら通過して行くと、もの凄い迫力を体験して頂けます。

私が船長兼ガイドとして乗船し、それぞれの施設を丁寧に解説しています。

また当初予想していなかったのですが、アジュール舞子の防波堤の上にカモメがたくさんいて、このカモメたちの餌付けに成功しました。

「イルカ号」の事はもうしっかりと覚えてくれたようで、船のすぐ近く、手の届きそうな所まで近づいて来てくれます。子供だけでなく大人の方もエサやり体験に夢中です。私のガイドよりそちらの方が面白いようで、なんだか複雑な気分です。

また、お勧めは夕方に出航するサンセットクルーズ。

明石海峡大橋の向こうに沈んでいく夕日を船上から見てもらいます。この景色をご覧になったお客様は船を降りるとき私に握手を求めてきます。
「素晴らしい景色を見せてもらいました、ありがとう」
こんな声を聴くと疲れが吹っ飛びますね。

このような30分のクルーズだけでなく、この船を利用して様々なイベントを企画中で、8月10日には星陵の後輩でもある関谷君率いる「てぃんじゃーら」の船上ライブが開催されます。遊覧船事業は、神戸港はもちろん全国各地で行われていますが、私は今までの遊覧船事業の枠をはみ出して、いろんな事に挑戦して行きたいのです。船上ライブだけでなく船上落語会・船上お見合いパーティ・船上結婚式・船上同窓会・船上カラオケ大会・船上ディスコ大会その他、皆さんもイルカ号を利用したイベントをどしどしご提案下さい。イルカ号に乗ればいつも何かやっている、そんなクルーズが理想です。先日は淡路島で開催された花火大会にOB会の皆さんにも乗船して頂き、大変喜んで頂きました。

なんだか宣伝のようになってしまいましたが、前述にもありますように、私の生まれ育った場所、垂水から舞子にかけての素晴らしい景観を一人でも大勢の方に知って頂きたい、そして地元の観光振興の一助になりたい、その一心でこの事業に取り組んでいます。この気持ちは垂水区役所にも伝わり、先日は垂水区観光大使の「ごしきまろ」くんが来てくれました。

ぜひ皆さんも一度ご乗船ください、きっと今まで知らなかった明石海峡周辺における新たな発見をして頂けます。

この度は「LINK星陵」に掲載して頂ける機会を与えて頂きましてありがとうございました。
近いうちに皆さんと船上でお会いできることを願っています。