「癒されます!動物園と水族館」松本 信子(高36)

とくに動物や魚が好きだったわけでもないのですが、7、8年前から休みのたびに、全国各地、たまに海外の動物園や水族館を訪れています。小学生の頃は、3分の道のりが、学校の帰りにチョウチョやトンボについていっては、何時間もかかっていたと母親に言われたりするので、素質があったのかもしれません。

思えば、二男が小学校4年生の時の宿題で、全国の水族館調べをしたのがきっかけでした。

長男はそうでもなかったのですが、二男は保育園の頃から生物観察会や水族館などのイベントを見つけてきては、連れて行くようせがむ子でした。ですから、家族サービスといえば遊園地やテーマパーク、スポーツやカラオケなどよりも、水族館や動物園、科学館に行くことが多かったのです。4歳の誕生日に初めて連れて行ったディズニーランドの一番の思い出は、さわれそうなくらい近くで野生のカラスを見られたことですから…二男が大きくなり、一緒に出かけるような年齢ではなくなったときには、私の方が動物園や水族館の楽しさにどっぷりつかってしまってやめられなくなっていました。ちょうどその頃に同じ趣味の友人がみつかったこともあり、大人だけでの動物園&水族館めぐりが始まりました。

長い間動物園に行っていない人にとっては、動物園ってくさい、汚い、狭い檻の中で動物が可哀そう、というイメージがあるのではないでしょうか。最近の動物園は年々飼育や展示の技術がどんどん進化して、想像以上に楽しい場所になっているのですよ。たとえば、旭山動物園で有名になった「行動展示」。じっとしていることの多いイメージのオランウータンが高い場所を綱渡りしたり、よちよち歩きのペンギンがまるで空を飛ぶように頭上をビュンビュン泳いだり。行動展示は動物本来の行動を観察しやすいように工夫が凝らされていて、野生動物ってこんなふうな行動をするのか、というのを目の当たりに見る事が出来ます。

動物の好きなおもちゃを与えたり、餌を食べるのに時間がかかるような小道具を取り入れることで、動物が退屈しないだけでなく、来園者も見ていて楽しめる工夫もあります。動物ショーのように、人間は見ていて楽しいけど、動物にとっては?というのではなく、動物の精神衛生上もプラスになる、というのがポイントです。

【写真左から】

行動展示で有名になった、アザラシのチューブ水槽(旭山動物園)

ホッキョクグマはおもちゃで遊ぶのが得意で大好き!(釧路市動物園)

1970年代からアメリカで盛んになったと言われている、動物がまるで生息地の環境で暮らしているかのような、環境ごと再現した「生態的展示」も見ものです。最近は日本の動物園でもどんどん取り入れられていて、ここはアフリカ?アマゾンの熱帯雨林?といった雰囲気の中で動物に出会うことが出来る工夫もされています。放飼場がとても広く、木々も生い茂って動物が見えにくいため、双眼鏡を貸し出している動物園もあるほどです。

【写真左から】

大阪の街中にあるとは思えないゾウ舎。(天王寺動物園)

テーマパークのようなペンギン舎(イギリス ブリストル動物園)

よくある氷の山ではなく生息地を再現したペンギン舎の一部。広いです!(ロンドン動物園)

また、繁殖技術の進歩だけでなく、これらの動物の幸せを考えた展示や工夫、精神的なことも含めたケアの効果もあるのでしょうか、昔に比べてかわいい赤ちゃんがみられることも多くなったと思います。例えばアジアゾウは明治のころから動物園で飼育されはじめたといいますが、赤ちゃんが生まれるようになったのは、2004年が初めてです。以来続々と10頭もの赤ちゃんが生まれています。ゴリラも1950年代から飼育されていますが、今まで日本で生まれた赤ちゃんは15頭。そのうち8頭は2000年代になってからの誕生です。

【写真上段左から】
富士山をバックにアジアゾウの親子(富士サファリパーク)
お母さんにおんぶされたゴリラの赤ちゃんとお父さん(東山動植物園)
オランウータンは6,7歳までお母さんに甘えます(多摩動物公園)
日本の小さな動物園くらいの広さがありそうなゾウ舎。群れで暮らし、毎年赤ちゃんが生まれています。(サンディエゴ ワイルドアニマルパーク)

私は大型類人猿、特にゴリラが大好きなのですが、昔と違って上野動物園や名古屋の東山動植物園、京都市動物園では家族のゴリラが見られます。ペアや単独で飼育されているゴリラと違って、家族で暮らしているとドラマがあって本当に楽しいです!息子とお父さんでお母さんを取り合いしたり、人間のようにお母さんが赤ちゃんに高い高いをして喜ばせたり(飛行機遊び)、お父さんやお姉ちゃんがちょっとだけ赤ちゃんにさわらせて、と指でそうっと触れたり、おでこにキスをしたり。あんまり赤ちゃんに触りすぎてお母さんに怒られ、お母さんの倍くらいも大きな体のお父さんがしゅんとすねてみたり。本当に見ていて飽きなくて、癒されて、何度も何度も通ってしまいます。

なかなか生まれにくい動物の赤ちゃんが、どこそこの動物園で生まれた!公開が始まった!と聞くと全国の動物園に出かけてしまいます。先日も日本で10頭目の、2か月のインドゾウの赤ちゃんに会いに、沖縄こどもの国へ行ってきました。

【写真左から】
インドゾウの親子(沖縄こどもの国)
8メートル近くあるジンベイザメのいる巨大水槽。アクリルの厚さはなんと60cm!(沖縄美ら海水族館)

最後に水族館のことを少し。動物園と違って水族館は食べたことのある動物(魚)が展示されています。いつもおいしいあの魚は、こんなふうに生きているんだ、泳いでいるんだ、という楽しみ方もあります。また、陸上の世界と違って海の中、特に深海なんてまだまだ未知の世界。なので、見たこともない生き物、どうやって生きているのか意味不明な生き物、初めて発見されたため、まだ名前のついていない生き物、に出会えることがあります。動物園と水族館って似ているようで、ワクワクする部分が全然違うのです!最近の大型水槽はどんどん進化して、海の中そのものを体験している気分に浸れる水族館もたくさんあります。数年前まで世界一の巨大水槽だった、沖縄美ら海水族館の黒潮水槽は、本当に海そのものを切り取ってきたようなスケールで、海の中にいるような気分が味わえ、初めて訪れるとなかなかその場を離れることはできないでしょう。世界最大の魚、ジンベイザメが3匹も泳いでいても狭さを感じさせず、海に潜らなければ見られない光景が簡単に得られるのも水族館の楽しみです。7500tもの巨大水槽も、世界の中ではいつの間にか抜かされてしまい、今では3番目、とか4番目って言われているのですが、技術の進歩にはびっくりさせられます。

日本中には楽しい動物園や水族館がまだまだたくさんあり、毎週毎週楽しみは尽きません。老後の趣味にもぴったりです!みなさんもたまにはいかがですか?
最後にお気に入りの展示。オランウータンとシロテテナガザルが仲良く餌を食べています。
こんな展示は日本でここだけ!